熱海句会 2023.10.14
ゲスト 町田康先生( 兼題『蓑虫』『とろろ』のご出題 )
・頬髭にとろろ残して驕る木偶
野葛間
・栗はじけ行き倒れたる骨の音
野葛間
・あだし野や蓑虫縋る無縁仏
野葛間
・忘却の膜はとろろのマチエール
白石ポピー
・蓑虫鳴く職歴のほか何もなし
心
・通ひ路を見失ひをり草の花
心
・蓑虫やかまいたくなる死の気配
・悪口の後味痒しとろろめし
苔子
・マチネーとソワレの間とろろ飯
心
・月出でて蓑虫摘み僧ひとり
野葛間
・蓑虫や無言の中に凝る声
・蓑虫やパンク小僧の艶やかさ
苔子
・道半ばふと嫌になるとろろ汁
・とろろ汁逝きし女房の血が滲み
野葛間
・猫逝きて床暖入れる日の寂し
苔子
・ケイトウは瞼の裏にもえうつる
白石ポピー
・子に応(いら)ふ父の裸足や鰯雲
まめ
・天井のない牢獄に鳥渡り
苔子
・ファミチキになりらむ鶏の声を聴く
白石ポピー
・蓑虫や無頼と食べる焼餃子
・蓑虫に怜悧の音や糸紡ぐ
まめ
・蓑虫も裸でいたい余炎かな
苔子
・とろろ汁亡き友の声したやうな
心
・蓑虫を剥きて敷妙を占ふ
白石ポピー
・少年の砂上の相撲を見るカモメ
まめ
・蓑虫よこの店もまた閉店か
心
・お仕着せの浴衣集まる秋の花火
まめ
・残菊も仇花もただ咲くばかり
白石ポピー
・あと五分急いで啜るとろろ汁
・食券を置き温かいとろろ蕎麦
まめ
町田先生、参加者の皆様、ありがとうございました!