第47回いちご俳句会(作品集)

 

冷や麦や京に二つの本願寺

観月

 

ゴミ置き場羽根の破片と扇風機 

亀歩   

 

扇風機つばきのやうに首の落つ

白石ポピー

 

月に酔ひ白蛾は夜を投げ落とす

林達男 

 

ふくよかに遺作の映画やサングラス

まめ  

 

古臭い恋をしてます糸蜻蛉

観月

 

花にうとき吾の酒しろし飯しろし

白石ポピー

 

恋破れソーメン食す白夜かな 

亀歩

 

蒼い時間に一吹きの風蝶生れる

林達男   

 

硝子鉢の西瓜や紅鉄漿損なわず

まめ

 

 

第46回いちご俳句会(作品集)



ポタージュの膜をつついて桜桃忌

白石ポピー

 

常連を迎ふ何代目かの熱帯魚

まめ

 

白桃の竜の傍で眠ったの

林達男

 

光らなくなつた蛍は焚べませう

白石ポピー

 

次々とゴスロリ集う木下闇

亀歩

 

夏至なのに真面目な猫はつまんない

観月

 

脱皮して蛇は少女になりたがる

観月

 

夕立を北欧メタルが巻き上げる

まめ

 

快楽放つ月の広場が開くとき

林達男

 

裸子や背なの傷跡すいか割り

亀歩

 





 

 

第45回いちご俳句会(作品集)

 

 

難破した心にかけるうすごろも

林達男 

 

君の指薄暑の濃度掻き回す

白石ポピー 

 

大和路の古寺に立夏の太柱

観月 

 

繭を吐く音やたのしき五月闇

白石ポピー   

 

夏来たる遠野に水の物語

観月 

 

虎の尾を踏ませず入梅三角旗 

亀歩  

 

風操る人と旅する玫瑰の花

まめ 

 

イケメンの蟇(ひき)が来りてウインクす 

亀歩 

 

拗ねて先づさくらんぼをプリンアラモード

まめ  

 

メロディーのやうに孤独な夏の月

林達男

 

 

第44回いちご俳句会(作品集)

 

 

木を離れ水の桜となりにけり

観月

 

しゃぼん玉大きな景色宙に浮き

つよし

 

鳥交る妻はもも肉かぶりつく

亀歩

 

魚卵魚卵ユングは唄うさめざめと

白石ポピー

 

鳥帰る海の向こうの戦場へ

観月

 

メロディーは甘い楽欲(ぎょうよく)桃一木

林達男

 

月影に柘榴の花が咲くときは

林達男

 

乱れ髪リンス二度漬け春うらら

亀歩

 

昂然と蝶の家紋や家なき子

まめ

 

糟糠の妻に触れたは暮春の通夜

まめ

 

鞠投げぬなら死すべしと犬の眼や

白石ポピー

 

春眠の宇宙遊泳より帰還

つよし

 

 

第43回いちご俳句会 (作品集)

 

平仮名の「ぬ」字が書けぬ朧かな

観月

 

シャンソンの聞こえさうなる桜草     

つよし

 

麗らかに個人情報刺繍せり

亀歩

 

後悔はしない主義です猫の恋

観月

 

フラスコを離さぬ日々や水温む 

幸夫

 

亀鳴くや愛の女神のとけそうな

林達男

 

赤い牡丹悠々然と帯解きぬ

林達男

 

四月馬鹿をとこは和泉の胴間声

まめ

 

初桜此木の下に傘寿舞ふ

洋子

 

初桜嬰児の手の柔らかし

洋子

 

蛇穴を出づ少子化の勢ふ中

幸夫

 

ジンチョウゲくちをひらいて餌ねだる

白石ポピー

 

ハマグリを眼窩に縫った頭蓋骨

白石ポピー

 

春ショール相合坂にたれを待つ       

つよし

 

春ごたつ再配達は来ぬままに

亀歩

 

満員のバスを見送る白木蓮

まめ

 

 

第42回いちご俳句会 例会(作品集)

檸檬色のスカーフ覗く春コート

まめ  

 

春の夜に指鉄砲で夫を撃つ

観月  

 

早梅の陰に怯えて寺を焼く

白石ポピー  

 

鳥獣の罪無き奇声園おぼろ

つよし   

 

春浅し配膳今朝はとさか髪

幸夫  

 

大胆に寝そべる仔馬宿題は

幸夫  

 

セロファンに水滴ゆがむ二月かな

かわせみ 

 

見慣れない制服の子や半仙戯

まめ   

 

ネアンデルタールの生首春の雷

林達男 

 

春寒し国籍の無き獣どち

つよし 

 

鞦韆や優しき人の冷たき手

亀歩 

 

稚気に富むババロア帯びたメトロ往く

白石ポピー  

 

淋しさが蝶のかたちで掌にとまる

林達男 

 

春の海さ丹の煙や地獄より

亀歩  

 

立春の光は水より溢れ出す

観月 

 

「奥様!」と覚め際の声春の夢

かわせみ

 

第41回いちご俳句会 例会(作品集)

第41回いちご俳句会 例会(作品集)



 

ピンヒール腓(こむら)が揺れて冬麗

亀歩(きっぽ) 

 

どことなくサンバのリズム笹もて来い   

つよし 

 

辛抱の母大袈裟な父古日記

まめ 

 

寒の水新札浮かすかと自問

幸夫  

 

 Nature calls me.

呪ひの外れてコール寒の真夜

幸夫 

 

元旦や詰め物取れて餅の中

亀歩  

 

しなやかなガラス閃き恋猫に

林達男  

 

胸中の水子の声か虎落笛

観月 

 

絶滅の危惧種の鳥と山眠る

観月

 

背泳ぎであおげばそこに寒気団

白石ポピー

 

雑踏の濁世に仄と福娘

つよし  

 

子ども立尽す障子の内は嵐かな

まめ

 

恋猫飛び越ゆ沈黙も絶叫も

林達男  

 

くれなずむコインパーキングなじまぬ

白石ポピー